自分の心を苦しめないようにして欲しい
アトピーによる精神的な苦しみ…。
これは本当にきついです。
痒み、痛み、滲出液や血が流れる不快さ、自分の皮膚がボロボロになっていく絶望感、思うように生きられない焦燥感、そしてどうなってしまうのかわからない未来への不安…。
言い出したらキリがありません。
僕がアトピーだったとき、自分の心はグチャグチャでした。
この終わりの見えない地獄のような現実から解放されたかった。
この残酷で無意味な自分の人生を終わらせたいと、何度考えたかわかりません。
過去の僕に限らず、アトピーの人は、毎日この精神的な苦しみとせめぎ合いながら生きています。
そして、この苦しみと共に生きる厳しさや難しさが身に沁みています。
ただ…、僕は敢えてここで、アトピーの方には『自分の心を苦しめない』ようにして欲しいと書きます。
アトピーで苦しんいた当時の僕がこれを言われていたら、確実に腹立たしく思っていたはずです。
「そんなこと簡単に言うな!」
「それができたら苦労しない!」
当たり前です。
誰も自分の心をワザと苦しめたい人なんていないのですから。
それでも、『自分の心を苦しめない』ようにして欲しいと僕は言いたいのです。
なぜなら、“アトピー改善の可能性を高める”ため、もしくは“アトピーの今以上の悪化を少しでも防ぐ”ためだからです。
心とアトピーには、深い関係性があります。
精神的な苦痛をモロに受け続け、(大きな)心の乱れを何回も繰り返していると、アトピーの改善から遠ざかってしまう一方です。
僕もひどく感情的になったり、心が苦しくなればなるほど、痒みや便秘が一気にひどくなっていました。
もちろん、現実的には、非常につらいアトピー生活の中で自分の心を苦しめないようにするというのは、はっきり言ってそう簡単なことではありません。
ただ、そのつらい日々の中でも、どうすれば自分の気持ちを落ち着かせたり、切り替えたりすることができるのか、探求し、いろいろと試してみるということは、とても大切だと思うのです。
そして、そんな日々の試行錯誤によって、心の苦しみを消し去るとまではいかなくとも、苦しみの“勢いを落とす”というのは十分に可能なことです。
この苦しみの“勢いを落とす”というのは、自分では気づかないくらいの非常に小さな成果かもしれません。
しかし、その小さな成果が積み重なっていくことで、結果的には心の苦しみを軽減させることにつながっていきます。
特に、ただただ感情に激しく振り回され続けた場合と比べたときに、その心にかかる負担の差は明らかです。
僕の“心を苦しめない考え方”
僕もアトピーで苦しんでいた当時は、本当にいろいろと悩み、試行錯誤の連続でした。
そして、最終的に次の3つを意識して、少しでも自分の心を苦しめないように心掛けていました。
考え方は人それぞれだと思いますが、ちょっとでも参考になる何かがあればと思い、ここでご紹介します。
- 卑下しない
- 焦らない
- 比較しない
卑下しない
卑下することは、自分で自分を殴りつけているのと一緒です。
自分の心を自分自身で苦しめているのです。
卑下する思考や言葉は、自分の心に突き刺さり、体に染み込み、脳に刷り込まれます。
“自信”や“勇気”を持てない自分をつくることにもなりかねないのです。
アトピーと闘い、十分すぎるほど頑張っている自分自身を卑下する必要は絶対にありません。
焦らない
はやくアトピーをなんとかして生活や人生を立て直さなくちゃと、僕も常に焦っていた時期があります。
でも、焦っていても何も変わらないのです。
むしろ心がすり減り、どんどんしんどくなるだけです。
そして焦れば焦るほど、未来をつくる“今”にしっかりと集中できなくなります。
その結果、さらに焦りがつのって悪いサイクルになりかねません。
アトピー改善のために焦ることは逆効果です。
比較しない
比較は多くの苦しみの根源にあります。
他人と比べたり、世の中の普通や常識と比べたりして、自分の心を苦しめてしまうのです。
比較し続けるということは、自分以外の何かに人生を左右され続けるということ。
こんなにもしんどくて、もったいないことはありません。
そして、アトピーではない人や、アトピーがない人生と比較しても意味はありません。
どんな自分であろうと、自分は自分です。
納得できないことだらけかもしれませんが、それでも受け入れて生きていくだけです。
アトピーが改善すれば、人生の流れは変わります。
腸内環境が改善されれば心も安定する
『自分の心を苦しめない』ようにして欲しい理由として、“アトピー改善の可能性を高める”ため、もしくは“アトピーの今以上の悪化を少しでも防ぐ”ためだと書きました。
では、なぜ、心の苦しみがアトピーの改善や悪化に関係してくるのでしょうか。
それは、過度のストレスが腸に悪影響を及ぼすことになるかもしれないからです。
そう、ここでも重要なカギとなるのが『腸(内環境)』なのです。
心が苦しいときというのは、私たちの脳が大きなストレスを受けている状態といえます。
実は、脳がストレスを受けると、自律神経を介して腸にもその影響は伝わり、便秘などの不調が発生することがあるのです。
その結果、アトピーの改善や悪化に関係してくるということなのです。
これは逆もまた然りで、腸内環境が悪いと、脳もその影響を受けて気分が落ち込んだり、ネガティブになりやすかったりするのです。
脳と腸が情報のやり取りを行い、互いに影響を及ぼし合っているこの関係は、“脳腸相関”と呼ばれています。
ということは、この脳腸相関の関係から、腸内環境を改善すれば、ストレスや不安を和らげることができるということです。
実際に、僕はアトピーを改善するために、酪酸菌を増やしたり、甘いものを控えたりなどして腸内環境を整えるようにしてきましたが、その過程で精神の安定や不眠の解消など、その恩恵をハッキリと感じていました。(このことは、これまでの記事の中でも成果として触れています)
腸内環境を良好に保つことは、アトピーの改善はもちろん、精神的安定や不眠解消など、多くの良い影響をもたらしてくれるのです。
心の苦しみとの向き合い方
アトピーで苦しんでいる方にとって、心の苦しみというのは最大級の課題だと言えます。
通常なら、精神的にしんどかったら旅行に行ったり友達と遊んだりなどして、リフレッシュなんてことも簡単にできます。
でも、アトピーがしんどいと、なかなかそうもいかないのが現実です。
当時の僕は、映画や動画を観たりゲームをしたりと、とにかく苦しい心をなんとか紛らわせようとしていました。
それで精神的苦しみが消えたわけではないのですが、それでも少しは現実から逃避することができ、気持ちが落ち着くこともありました。
微々たることですが、今考えるとそれで十分だったと思います。
今の自分ができる範囲で、自分の気持ちに寄り添いながら、どうすれば少しでもこの苦しみを和らげられるのか、試行錯誤することが大切なんだと思います。
そして同時に、“腸内環境を改善する”ということからのアプローチで精神的な安定を獲得していくというのは、やはり心の苦しみから解放されるためにとても効率的で効果的な方法だと僕は確信しています。
【Appendix】その他の“心とアトピーの関係性”
自立神経と蠕動運動
強いストレスを感じたり、精神的に不安定な状態が続くと、交感神経が優位になり自律神経が乱れてしまいます。
交感神経が優位な状態が続くと、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が抑制されてしまい便秘につながってしまいます。
結果的にアトピーにも悪影響です。
逆に、副交感神経が優位な状態では、腸の蠕動運動は活発化し排便が促されます。
リラックスしているとき、心が落ち着いているときなどに、副交感神経は優位になります。
セロトニン
“幸せホルモン”と呼ばれるセロトニン。
脳内のセロトニンが増えることで、精神的な安定につながります。
また、セロトニンは睡眠に関係するホルモンであるメラトニンの材料にもなります。
そのため、セロトニンが減少すると、不眠など私たちの睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。
セロトニンを増やすためには、日光を浴びたり、体を動かしたりすることが有効です。
(ただ、アトピーがひどい状態のときに、無理をする必要はありません)
また、腸内でもセロトニンはつくられています。
しかも、私たちの体の中でつくられるセロトニンの90%以上が、腸内でつくられているのです。
腸内のセロトニンが増加すれば、腸の蠕動運動が活発化し、消化も促進されます。
腸内のセロトニンを増やすには、酪酸菌を増やして腸内環境を良好に保つことです。
ただ、腸内でつくられるセロトニンは血液脳関門を通過できず、脳に到達できません。
しかし、なんらかの形で腸内のセロトニンも脳内のセロトニンに影響を及ぼしているのではないかと言われることもあり、精神的安定のために、腸内のセロトニンを増やすことは無駄ではないと考えられます。
コルチゾール
ストレスを受けると、副腎という臓器から“ストレスホルモン”と呼ばれるコルチゾールが分泌されます。
コルチゾールには、体内で発生する炎症を鎮めるという役割りがあり、私たちの体にとってなくてはならない副腎皮質ホルモンです。
しかし、ストレスを継続的に受けているとコルチゾールの分泌量が過剰になり、逆に問題となることもあります。
コルチゾールを過剰に分泌することで、副腎疲労が起こるのです。
そのため、コルチゾールの分泌量が減少し、体の各部で発生する炎症を抑えきれなくなってしまうのです。
腸や皮膚の炎症を抑えきれなくなれば、アトピーも悪化してしまいます。
さらに、コルチゾールの過剰分泌によって、“幸せホルモン”であるセロトニンにも悪影響が及びます。
コルチゾールは血液を介して脳内に届き、セロトニンの分泌を妨げてしまうのです。